1988年12月刊行。吉本ばなな3作目にして初の長編小説『哀しい予感』。
その少女漫画的世界観が人気を博し、1989年年間ベストセラーの総合7位を記録。
2007年に塚本晋也演出により舞台演劇化されました。
(ちなみに1989年のベストセラーは1位『TUGUMI』2位『キッチン』5位『白河夜船』6位『うたかた/サンクチュアリ』12位は初のエッセイ『パイナップリン』と、吉本ばなな作品だらけ)
僕は、この本を読んでいた辺りが吉本ばななにハマっていたピークだと思います。
以下、ネタバレを含むあらすじ、および読んだ感想(書評)などを解説していきます。
(吉本ばななさんの他作品の書評はコチラ→『TUGUMI』『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』『ふなふな船橋』)
目次
吉本ばなな『哀しい予感』の登場人物
登場人物はそれほど多くない上、名前も特徴的なので、混乱することなく読み進められると思います。
弥生(主人公)
19歳の学生。この物語の語り手。
医師の父と、元看護師の母、年子の弟・哲生の4人家族。
幼い頃、未来が見える不思議な能力を持っていた。
おばのゆきのに親近感を持っている。
ゆきの(主人公のおば?)
古い一軒家に一人暮らしをしている私立高校の音楽教師。
変な生活をしている。
変わった性格だが、生徒からの人気は高い。
独身。
哲生(主人公の弟?)
弥生の年子の弟。高校生。
姉の弥生に姉と弟ではない感情を抱いている。
正彦くん(ゆきのの恋人)
おばのゆきのの元教え子で恋人。
吉本ばなな『哀しい予感』のかんたんなあらすじ(ネタバレ有り)
幼年期の記憶が無い19歳の学生、弥生。
一軒家に一人で住んでいる変わり者のおばがいるが、
「私達は絶対に仲が良い」と確信できる不思議な縁を感じていた。
ひょんなことから自分が昔、未来や過去を見る能力があった事を知る弥生。
その能力が覚醒したのか、突然、両親ではない夫婦と「姉」のビジョンが頭によぎる。
この知らない人達は、一体誰なのか?
自分の幼年期の記憶が無いのはなぜか?
「私にはよそに、血のつながった肉親がいる」
いちど膨らんだ疑念は確信めいた想いに変わっていく。
そんな中、弥生は叔母の家に家出する。
おばの一言をきっかけに、弥生が知らなかった事実が明らかになっていく。
吉本ばなな『哀しい予感』の名言
哀しい予感には、人生への示唆に富んだ沢山の名言があります。
ここでは、その一部をかんたんに紹介。
ああ、ほんとうに、わからないままでいいことなんてひとつもないのだ(Kindle版位置No.1568 / 1900) by 弥生
弥生が哲生と、弥生の出生の秘密について話している時、弥生が言う言葉です。
知らないと、なにもできませんからね。
「知らぬが仏」でいて平穏なのは、何も感じていない場合のみです。
担当編集者の「解説」で知らされていますが、実はこのフレーズは、文庫版に際して書き加えられたもの。
吉本ばななさんの実感がこもった言葉という感じがしますね。
吉本ばなな『哀しい予感』映画・舞台
「哀しい予感 映画」で検索する人が多いようですが、映画はありません。
2007年に舞台化されましたが、その時の演出が塚本晋也監督だったからかもしれません。
舞台は、以下のキャストで行われました。
弥生:市川実日子
哲生:加瀬亮
ゆきの:藤井かほり
正彦:奥村知史
吉本ばなな『哀しい予感』の評価
6.5点(10点満点中)
吉本ばなな『哀しい予感』の書評・感想
ここでは、僕の個人的な感想を記したいと思います。
前述の通り、僕は本作は4冊目に読了した吉本ばななさんの著書です。
血の繋がりの特別さ
吉本ばなな『哀しい予感』が好きな人におすすめの作家と本
ばななさんの本はもちろんですが、あえて他の作家の本をおすすめしておきます。
ぜひ読んでみてください。
武者小路実篤
白樺派の思想代名詞的存在の武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)。
理想主義的な言動で知られる彼の作品は、やはり人間の美しさを感じられる作品となっています。
吉本ばななさんの本と似ているのは、清涼な読後感。
きっと好きになると思います。
僕のおすすめは以下の3冊です。
吉本ばなな『哀しい予感』以外の作品もおすすめです
ばななさんの作品は、どれも読後感が気持ち良いです。
一度ハマると、ずっと読んでいたくなるでしょう。
Kindle版も文庫もどちらもあるので、ぜひ読んでみてください。