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【映画『あの夏、いちばん静かな海。』ネタバレ有り考察】ラストはなぜ?と思うが…映画の妙味を味わえる傑作

「北野映画はつまらない」

「暴力シーンばかりで怖そう…」

本作は、そんな風に感じている人にぜひ勧めたい映画です。

 

1991年公開。北野武監督(ビートたけし)3作目となる『あの夏、いちばん静かな海。』。

僕はサーフィン映画を探していて本作と出会いましたが、結論から言うとサーフィン好きだけじゃなく、北野作品ファン、映画好きはもちろん、

映画が好きではない人にすら勧めたい至高の作品

です。

 

「サーフィン」「恋愛」「聾唖者」「青春」「無声映画」といったキーワードに惹かれる人にもオススメです。

以下、ネタバレを含むあらすじ紹介と感想です。

 

ちなみに『あの夏、いちばん静かな海。』をいますぐ観たい人向けにと思って、動画配信サイトを調べたのですが、

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のどこにも観れるサービスはありませんでした

ですが、ゲオ宅配レンタルなら、レンタル可能でした。

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(これを見て海に行きたくなった方は、週5サーフィンする僕のおすすめ日焼け止めでバッチリ日焼け対策して行きましょう)

『あの夏、いちばん静かな海。』の上映時間

101分。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』の監督

「世界のキタノ」と評される北野武監督(ビートたけしの本名)です。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』の音楽

久石譲氏が担当。ジブリの音楽などでおなじみですね。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』のロケ地

神奈川県足柄下郡(湯河原海水浴場など)、横須賀市(追浜商店街付近、どぶ板通り商店街付近、久里浜港など)、千葉県富里市(金谷のフェリーターミナルなど)、南房総市(千倉の海水浴場など)。

僕もサーフィンした事もある千倉の海岸が出てきて嬉しかったです。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』のキャスト

ビートたけし、真木蔵人(プライベートでもサーファーでありサーフショップも経営)、大島弘子、藤原稔三、鍵本景子、小磯勝弥、河原さぶ、芹澤名人、寺島進、田山涼成など。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』のあらすじ(ネタバレ有り)

主人公の茂(真木蔵人)は、ゴミ収集車でゴミ回収の仕事をする聾唖者(耳の不自由な方)。

ある日、いつものように仕事をしていると、ゴミ捨て場に先が折れたサーフボードが捨ててあるのを見つけます。

一度車に乗り込むも、気になった茂はそのボードを拾い、発泡スチロールをつなぎ合わせて修理。

恋人で同じく聾唖者の貴子(大島弘子)と海へ向かうところからストーリーは始まります。

 

海へ向かうとそこには地元のサーファーが。

茂は彼らにバカにされますが、来る日も来る日も黙々とサーフィンを続けます。

新しいボードを買い、さらにサーフィンに熱中し始めた茂は、次第に地元サーファーからも認められるように。

茂がサーフボードを買ったショップの店長中島(藤原稔三)は、茂のサーフィンへのひたむきな姿勢に心を打たれ、ある日茂にウェットスーツをプレゼントします。

 

サーフィン中心の生活を送り仕事おろそかにするようになった茂は、上司に叱られます。

が、茂のサーフィンへの情熱を目の当たりにした上司の田向(河原さぶ)は、次第に茂が全力でサーフィンできるように彼を裏で支えます。

上達した茂は大会に出場し入賞を果たしました。

 

そんなある日、いつものように茂の通う海へ向かう貴子。

到着すると、いつもなら海に入っているはずの茂の姿はなく、波打ち際に彼のサーフボードだけが残っていました。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』の評価

9.5点(10点満点中)

僕がすべての映画の中で、最も好きな映画の一つです。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』の考察・解説・感想

「映画より本が好き」なあなたへ。「映画ならではの表現の醍醐味」を知れます。これが「映画」です。

 

「映画って想像の余地が少なくない?」

「想像の余地が多い小説の方が面白い」

「小説の映画化は基本駄作」

「映画に2時間拘束されるのはちょっと…」

 

実は僕自身、長い間このように考えて生きてきました。

だからこそ、その時の僕に勧めるつもりで書いています。

 

まず、本作は、セリフが非常に少ない。

主人公とヒロインが聾唖者のためです。

結果、セリフではなく、映像と音楽で雄弁に語りかけるのです。

 

人物の視線や表情。

環境音。

音が鳴っている事で際立つ静けさ。

カメラワーク。

 

映画だからこそできる表現の妙味、醍醐味が詰まっている。

「これぞ映画!」

と言いたくなる魅力が、本作にはあります。

 

ミスタービーンとチャップリンが好きな人は、多分この映画も楽しめると思います。

 

人生は甘くないし、儚い。

僕がこの作品で感じたのは、北野武監督の有名な映画『キッズ・リターン』でも感じた、

「人生は甘くないし、儚い」

といったメッセージでした。

 

冒頭、死んだ魚のような目をして仕事をしていた茂。社会に飼い殺しをされ、うだつの上がらない日々を続ける茂の姿には「諦観」が漂っていました。

「死んでいるような生活」

「生きてても死んでてもあまり変わらない」

そんな茂の人生の幸せの象徴は貴子でした。

 

それがあの日、サーフボードを拾ってから、茂の人生は少しずつ色付きだします。

 

何かにすがるように、祈るように、無我夢中でサーフィンを続ける茂ですが、ボードが壊れて貧困が問題として表面化。

自分の耳が聞こえない事で残念な事があったりと、楽しい事ばかりではありません。

それにサーフィンに夢中になるあまり、危うくもう一つの大切なものを失いそうになってしまいます。

この、とんとん拍子でうまくいきそうなのに「いかない」ところや、日常の些細な出来事が淡々と描かれていくのがリアル。

 

そして、色々うまくいき始めた途端、急に訪れる死。

「数年前まで生きていたのに急死した友人の日々」を見ているような感覚になります。

それもそのはず。タイトルからも分かるように、これは過去の「あの夏」について描いているものだからです。

 

センス溢れる詩的なタイトル

このタイトルのセンスも大好きです。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』

これは貴子目線のタイトルでしょう。

 

恋人の茂がサーフィンを始め、太陽できらめく海の水面のように茂の目が輝き始めた「あの夏」。

そして、突然姿を消した茂。

 

聾唖者である貴子にとって、世界はいつも静かなもの。

ですが、茂がいなくなった海は、あの夏、貴子にとって「いちばん静かな海」だったのです。

 

こんな詩的なタイトルの映画を、僕は他にあまり知りません。

 

印象的な登場人物

また、記事のタイトルに「群像劇」と記しましたが、登場人物それぞれの行動を裏打ちするストーリーが描かれています。

だからこそ、一人一人が印象的です。

 

特に、茂がサーフボードを買ったショップの店長は、この物語の核を握っています。

茂は店長がウェットスーツをくれたおかげで、冷たい海で長時間練習することができるようになりましたし、店長の誘いで、大会にも参加できるようになりました。

地元のサーフィン仲間の輪に入れたのも、店長の働きかけがあったからです。

 

努力とそれを認める人との出会いが人生を変えていくこの様子は、まさしく人生の真理の一つを表していると言ってよいでしょう。

 

「最近海に来ない」と地元サーファーから嘆かれていた店長ですが、茂が気になり海に足を運ぶように。

なぜ店長はそれほど茂を気にかけるのか?

もちろん茂のサーフィンへのひたむきさは理由の一つですが、最初のきっかけは、

 

「他店より割高で売っていたボードを茂が買った事で、もう少し値下げすればよかったかなとバツが悪かったから」。

 

これが人間らしくてとても良いです。

店長も昔、お金は無くとも、ただ無我夢中で波を追いかけているのが楽しかったサーフィン青年だったのでしょう。

きっとプロを目指す位熱中していたのだと思いますし、彼も周りの大人から助けてもらっていたのだと思います。

それがいまや、生活のためにサーフィンの敷居を高くしている自分がいる事に後ろめたさを感じ、また茂と当時の自分を重ねて、つい応援したくなったのだと思います。

 

基本的に、BGMいい仕事しすぎ。

さすが久石譲氏。

ジブリの音楽だけでなく、こういう作品でもいけるもんなあ。

 

「静けさ」を貫いていた作品の最後の過激演出が残念

監督の北野氏は「サービス」と評している最後のシーン。

巨匠黒澤明氏はじめ、さまざまな人から最後がもったいない、台無しにしているといった批判を受けているラストですが、僕も同様にもったいないと感じました。

 

淡々と描かれていたこの映画の世界に、急にわざとらしい「演出」が入り込んできて、さっきまで物語の世界の一員のようになって観ていたのに、なんというか最後に急に、

「はい、これは映画ですよ」

「ここがオチですよ」

と作り物感が出て、現実に引き戻される感じがしました。

 

(僕はあくまでこう感じましたが、人によっては最後の演出(映像と感情を増幅させるかのような久石譲の音楽)で感動する人もいると思います)

 

サーフィン映画、そして北野作品をもっと観たくなる

自分にとって身近なテーマだからでしょうか。僕はこの映画を境に、サーフィン映画をもっと観るようになりました。

 

たくさんのスポーツを経験してきた僕(野球、サッカー、バスケ、バレー、剣道、テニス、スノボ、フットサル、ボルダリング、ダイビング、etc...)ですが、サーフィンほど難しいスポーツは他に知りません。

本作でも、何シーンにもわたり茂が失敗する様子が繰り返し描かれていて、心を動かされました。

また、リアリティを追求した北野作品をもっと観るきっかけにもなりました。

(人によっては、茂よりもう少し早く立てるようになります)

 

本作でも使われていた「繰り返し」の手法は、日常を感じさせるのに十分な効果を発揮させると感じましたし、それを違うテーマの作品でどう描くのかが気になりました。

 

「邦画はつまらない」と思っているあなたにこそオススメ

きっとあなたの邦画に対するイメージを変えてくれます。

 

『あの夏、いちばん静かな海。』のサントラ(サウンドトラック)は買いだと思う

この作品、DVDでも買って布教したいレベルで最高なんですが…

ラスト酷評しておいてなんですが、やっぱサントラ、めっちゃいいです。

 

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ここまで記していたらまたサーフィン映画色々観たくなってきました。

前に観た『The Endless Summer』とか超良かったなあ。

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  • この記事を書いた人

セネガル山田(セネ山)

西アフリカのセネガルで宿「シェ山田」を運営しつつ、1日6時間・週5日のサーフィン生活満喫中|セネガルサーフツアー「セネサーフ」好評受付中|セネガル観光ラップで晋平太コラボ&TV出演も|著書『アフリカ旅行ガイドブック セネガル』|詳しいプロフィールはコチラ

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