1954年公開。「世界のクロサワ」こと日本映画界の巨匠黒澤明14作目となる映画『七人の侍』。
僕は北野作品を観ていく中で、北野氏の好きな映画の一つが本作だと知り、是非観てみようと思ったのが視聴のきっかけでした。
以下、ネタバレを含むあらすじ紹介と感想です。
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目次
『七人の侍』の上映時間
207分。3時間超えの大作は、黒澤昭監督の映画作品の中でも一番の長編です。
『七人の侍』の監督
「世界のクロサワ」こと黒澤明です。
『七人の侍』の音楽
早坂文雄氏が担当。
僕はこの記事を書くために調べるまで知りませんでしたが、黒澤氏や溝口健二氏などの映画作品の音楽を数多く手がけています。
wikipedia掲載の以下のエピソードも印象的でした。
ピアノが買えない彼は、ピアノの音が聴こえれば、見知らぬ家であろうとかまわずに、その家でピアノを弾かせてもらっていた
『七人の侍』のロケ地
静岡県沼津市(鮎壺の滝)、静岡県伊豆市など
『七人の侍』の登場人物
カッコ内はキャストです。
島田勘兵衛(志村喬)
七人の侍のリーダーとなる男です。白髪のところを見ると設定としてはそれなりに年配だと思われます。数々の戦いをくぐり抜けて生き残ってきた男で、自身の戦闘力もさることながら、知識と経験の豊富さから、戦の戦術考案にも長けています。
菊千代(三船敏郎)
長剣を携える自称侍の大男。大真面目でやっている事が人に「笑われる」ピエロ的存在でしたが、勘兵衛達と時間を共にする中で、場を和ませるムードメーカーとしての役割を自然と担うように。農民と侍の間の架け橋のような存在になっています。
岡本勝四郎(木村功)
実戦経験のない半人前の若い浪人。勘兵衛に憧れて弟子入りを志願し、参戦決定。若者らしく、農民の女と本作唯一のロマンスも。
片山五郎兵衛(稲葉義男)
勘兵衛の人柄に惹かれ参戦を決めた侍。勘兵衛と勝四郎が腕試しのために仕掛けた待ち伏せを一目で見抜いた シーンからは実力の高さが伺えます。
七郎次(加東大介)
勘兵衛と旧知の仲である元家臣。勘兵衛からの参戦の求めに即座に応じる。
林田平八(千秋実)
腕は立たないが、苦境でも前向きな姿勢を崩さないポジティブな男。士気を上げるために自分達の旗を作るなど、菊千代とは違う形で侍と農民のムードを盛り上げる。
久蔵(宮口精二)
凄腕な剣客。寡黙ですが根は優しく、危険も顧みず困難に挑み決して驕らない。ただ、強くなる。それだけを目指すその姿は「男が憧れる男」の代名詞のような存在です。
儀作(高堂国典)
百姓達に「じさま(爺様 じいさまの意)」と呼ばれる長老。侍を雇い野武士と戦う事を利吉に教える。じさまがいなければこの物語は始まっていなかった。百姓達から絶大な信頼を得ている。
利吉(土屋嘉男)
村人達が野武士の襲来に怯えるなか、「野武士と戦おう」と真っ先に出した若い百姓。じさまのアドバイスを受け、町へ浪人探しに出かける。女房をさらった野武士に恨みを持っている。
茂助(小杉義男)
利吉達と浪人探しに出る百姓。百姓達のリーダーのような存在。
万造(藤原釜足)
百姓で志乃の父。利吉達と浪人探しに行ったメンバーの一人。利己的なところがある。
与平(左卜全)
利吉達と浪人探しに町へ出る百姓。アホキャラ。
志乃(津島恵子)
万造の娘。勝四郎とロマンスを展開。
『七人の侍』のあらすじ(ネタバレ有り)
世は戦国時代末期。村人たちは野武士達の襲撃におびえて過ごしていた。
ある日百姓が山へ出かけると、「麦が実る時期に、40騎の野武士達が村へ略奪へ行く」という野武士達の会話が聞こえた。ほとんどの村人達がむせび泣く中、若い百姓の利吉は、野武士と戦う事を提案する。
長老のじさまに相談したところ、侍を雇って戦う事を提案される。そこで利吉・茂助・万造・与平の4人は、町へ出て浪人探しをする事にした。
宿に泊まりつつ町で早速侍に声をかけはじめるが、相手にされず途方にくれる。それもそのはず、報酬は「飯が食える事」という、割に合わない仕事だったからだ。
そんな中、近隣の家に盗人が押し入り、子供を人質に立てこもる事件が発生する。そこを通りかかった初老の侍勘兵衛が、お坊さんに変装して子供を救い出す。
騒ぎを見ていた若い侍の勝四郎が弟子入り志願し、また謎の男菊千代が近寄ったりするなか、利吉は野武士退治を依頼する。勘兵衛はその条件では無理だと断る。仮の話として、やるとしても侍が7人は必要だと試算する。
これを聞いていた同じ宿に泊まる人足が、百姓の苦悩を知ったにもかかわらず行動しない勘兵衛を責める。それを聞いた勘兵衛は心を決め、依頼を引き受け、利吉達とともに残りの侍を探す事に。
勘兵衛の人柄に惹かれたという五郎兵衛、勘兵衛のかつての臣下(?)七郎次、朗らかで性格がよい平八、凄腕の剣豪久蔵が集う。残り1人はあきらめて村に出発しようとしたところ、菊千代が泥酔して現れる。勘兵衛達は菊千代を相手にせず村に向かうが、菊千代は勝手について来る。
村に到着した勘兵衛達だが、村人は「侍に娘を取られる」事に怯えて姿を見せようとしない。そこで突然、盤木(警報の役割をする)の音が鳴ったのと同時に、村人は家を飛び出し侍に助けを求める。これは菊千代の仕業であり、顔合わせを成立させたことで菊千代は侍の7人目として認められる。
勘兵衛達は、村周辺の地形を確認し戦術を練り、百姓達も戦いのために鍛え上げられていった。そんななか、若侍の勝四郎は、山の中で男装した志乃と出会い、恋仲となる。また菊千代が、村人が落ち武者狩りによって入手した刀や鎧を持ってきた。それを見た侍達は、これを見て殺気立つが、菊千代が、悪ズレした百姓を生み出したのは侍だ、と激昂したのを見て怒りを収める。同時に、菊千代が農民の出だと明らかになった。
麦の収穫が行われるなか、ついに野武士が偵察(物見)に訪れる。野武士を捕らえ本拠を聞き出した侍達は、焼き討ちを図る。その中に、野武士に談合の代償に奪われた利吉の女房の姿が。利吉の姿に気づいた彼女は火の中へ再び飛び込む。それを追おうとする利吉を取り押さえた平八は、野武士に打たれ死ぬ。村に戻り、皆が平八の死を悼む中、菊千代は平八が作り上げた「七人の侍と農民の旗」を村の中心に掲げる。それと同時に野武士達が村へ来襲、戦いの幕が切って落とされる。
地形を活かした戦い方で、侍と村人は野武士を少しずつ退治していく。しかし、種子島(火縄銃)をひとりで分捕ってきた久蔵を勝四郎が「本当の侍」と評したことから、菊千代は対抗意識から持ち場を離れ、単独で野武士を襲撃する。菊千代は種子島を持ち帰って来たものの、不在にしていた持ち場が野武士による襲撃を受け、さらに野武士の流鏑馬(騎射兵)が村に入り込んだため、与平を含む多くの村人が戦死し、侍のうち五郎兵衛も斃れる。日が暮れ戦いは一時止み、勝四郎は志乃に誘われて関係を持つも、その場を見つけた万造が激怒し騒動となる。
夜が明けると、豪雨の中、残る13騎の野武士が襲来する。久蔵は種子島に撃たれ倒れ、菊千代も撃たれるが、最後の気力で相手の大将を刺し殺し、力尽きた。侍と百姓達は、野武士を全滅させた。
村には日常が戻った。意気揚々とする村人達とは対照的に、生き残った侍3人の表情は浮かない。挨拶もせず、侍たちの横を田植に向かう村の娘たちが通り過ぎていく。その中にいた志乃は勝四郎を見て躊躇うが、何も言わず、一心不乱に苗を植えていく。
勘兵衛達は丘を見上げる。その上には、墓標代わりに刀が突きたてられた4つの侍の墓があった。
『七人の侍』の評価
8.5点(10点満点中)
僕が好きな映画ベスト10に入ります。
『七人の侍』の考察・解説・感想
七人の侍は何がすごいのか?大前提である娯楽としての「不朽の面白さ」
巨匠と呼ばれる人たちの作品の一体何が評価されているのか?そのように疑問を持った人は少なくないと思います。
僕も映画を見始めるようになる前は同じように疑問を持っていたのですが、実際に見てみれば、僕みたいな素人でも自然と「すごい」と感じるのです(以下で別途記しますが)。
そのすごさの大前提として、『七人の侍』は、とにかく単純に作品が面白いということがあります。
映画は芸術であると同時に娯楽だということを考えると、その時々の流行や笑いのツボに合わせて絶妙な演出を入れるものですが、本作は 公開から60年が経った今でも普通に面白いと思える作品であり、この「不朽の面白さ」こそ が、名作と呼ばれる第一条件だと言えるでしょう。
笑いあり、涙あり、そしてハッとさせられるラストシーンあり。3時間以上の大作ですが、時間を感じさせない内容となっています。
人間の心の美醜をこれでもかと描く本作。僕は、序盤は百姓への同情心が芽生えましたが、物語の展開とともに、次第に侍達へ同上するようになりました。
このように、どちらが白でどちらが黒なのかをはっきりさせず、考えさせる内容から、僕はアニメ『機動戦士ガンダム』を思い出しました。
『七人の侍』ラストシーンが素晴らしい。ただし…
最後のシーンでは、勘兵衛が七郎次へ
「今度もまた、負け戦だったな」
と述べますが、それを七郎次はそんな勘兵衛を不思議な顔をして見つめます。
そこで最後に勘兵衛が
「勝ったのはあの百姓たちだ、わしたちではない」
と説明するのですが、このセリフは蛇足だったと感じました。
楽しそうな農民、農民の娘志乃に無視される勝四郎、浮かない顔をする侍、そして丘を見上げる勘兵衛の視線の先にある、刀が突きたてられた4つの盛り土。情景描写だけでも、勘兵衛達の心情は十分に伝わってくると思うのです。
とは言え、本作のラストシーンが最高なのは変わりません。
(このラストシーンは、僕の中では北野作品が重なって見えました。北野作品が好きなのは、同様に極力セリフを排し、情景により心情を描いているからです。個人的には、黒澤氏の映画よりもさらにそぎ落としを進めたのが北野作品だと思っています。)
七人の侍の名言
「子供は大人より働くぞ。もっともこれは、大人扱いをしてやればの話だがな」(平八)
これは本当にその通りだなと感じます。人を動かすためのTipsとして気付きの多い言葉です。子供をアマチュア、大人をプロと言い換えても、文脈によっては通じそうです。
「敵は怖い。誰だって怖い。しかしな、向こうだってこっちが怖い」(平八)
周りから見るとすごい人でも、案外当人は自分に自信が無かったりするもの。シンプルですが、人間の本質を言い当てた明言です。
「人を守ってこそ、自分も守れる。己の事ばかり考える奴は、己をも滅ぼす奴だ」(勘兵衛)
「自分の家捨てて、人の家守るためにこんなもの(竹槍)かつぐことはねぇ!」
そう告げる離れ家の住人に刀を抜き、勘兵衛が言った一言です。戦いの厳しさ、そして人間は一人で生きていく事は出来ないという現実を突きつける言葉。
人生において「人」の指す範囲の設定は状況次第ですし難しいものですが、「三方良し」のように、利他的な精神を忘れないようにする事の大切さを説くシーンです。
「こいつは俺だ」(菊千代)
菊千代のいままでの奇行が、言動が、色々と許せてしまうような、そんな一言です。
「腕を磨く。そして戦に出て手柄を立てる。それから一国一城の主になる。しかしな、そう考えているうちにいつの間にか、ほれ、このように髪が白くなる。そしてな、その時はもう親もなければ身内もない。」(勘兵衛)
僕が一番心に残ったのがこの名言です。勘兵衛の付き人を志願し浪人になろうとしている勝四郎に対し、その暮らしの辛さを説明し、考え直すように諭しました。
僕がこの言葉から感じたのは、本筋とは違いますが「人生は事を成すには短い」「腕が有っても人生という戦に勝てるとは限らない」という人生の不都合な真実です。後悔の無いように生きようと思わされました。
『七人の侍』の久蔵について
『スラムダンク』で言えば流川、『幽遊白書』で言えば飛影。
みんな大好きクールで強くてかっこいい系キャラの久蔵ですが、演じている俳優「宮口精二」氏についても調べてみました。
「同じ貧乏をするなら、自分の好きな道で」
を合言葉に、生命保険の職を捨てて役者を志したそうです。身長159cmと小柄ながら、存在感のある役者さんだと思いました。
『七人の侍』の「休憩」が新鮮だった
僕が知らないだけで、昔の映画はこのような休憩があったのでしょうか?
とはいえこの映画ほどの長編もなかなかありませんから、珍しいのかも知れませんね。
また、エンドロールならぬ「オープニングロール」で俳優などが紹介されていたのも新鮮でした。
『七人の侍』予算が無くなり撮影中断危機!黒澤明監督はこうして乗り切った
『七人の侍』は当時としては莫大な予算をかけて製作された映画。
一説によれば、当時の一般的な映画撮影予算の6-7倍近かったとか。
理由は、
・上映時間3時間超え
・カメラ8台で世界初(※諸説あり)のマルチカムの撮影手法を採用
・製作期間1年以上(当時は数か月で撮影・編集を終える事もあったので、異例中の異例)
など色々ありますが、とにかく作品への黒澤明監督のこだわりが一番の理由でしょう。
その結果、なんと映画の製作途中にもかかわらず、東宝から撮影中止の命令が出てしまいます。
「いままで撮った映像で映画に仕上げろ」というお達しです。
そこで黒澤明監督は、なんと映画を未完成のまま試写にかけます。
それを観た東宝のお偉いさん方。
「この続きは?」
と尋ねます。
それに対して黒澤明監督は、
「ここから先は一コマも撮っていません」
と回答。急きょ予算会議が開かれ、予算が追加されたという事です。
ちなみに、この『七人の侍』と言う映画は、当時の東宝の社運を賭けた映画でもありました。
そのため、計画段階からかなり無茶な内容となっていたようですが、とにかく進んでいった結果こうなったようです。
東宝からしても、引くにも引けない状況だったのでしょう(笑)
『七人の侍』海外での評価と受賞歴
ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞をはじめ、世界中で高い評価を得ています。詳細は以下参照。
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『七人の侍』が好きな人におすすめの映画一覧
『七人の侍』が好きな人なら、以下の作品もきっと気に入ると思います。
・北野武監督作『あの夏、いちばん静かな海。』